平成14年7月15日記
一九七〇年代、地球規模で環境問題が注目され始めた頃、アメリカで環境倫理学という思想が生まれました。これは、何故人間が環境を破壊してしまうのか、環境を保護する有効なシステムはあるのか、などを追求解明しようというものです。
さて、環境倫理学は次の三つの問題を指摘しています。
世代間倫理の問題とは、簡単に言えば現代の私たちが有限な資源を使い果たしてしまう、あるいは環境を破壊してしまうことによって、未来の人たちの生存の可能性を著しく損なってしまうということです。
現代の文化は、今という時間を共有しているもの同士の関係で築かれています。結婚はかつて家同士の問題でした。「家」というのは、過去から現在、そして未来へと続いていく存在です。ご先祖様方の命や築いてきたものが現在の私たちに受け継がれ、私たちはそれを未来の子孫たちに渡していくという、いわば縦の時系列を軸に展開するシステムでした。過去から恩恵を受け、未来に責任を持たなければならなかったのです。
現在の私たちという存在、あるいは便利で快適な生活、自由な社会などはなぜあるのでしょうか。私たちが努力した結果でしょうか。もちろん、一部はそうでしょう。しかしそれとて、はるか昔にご先祖様がおられ、ご先祖様方の長い長い営みによる成果があり、その上に成り立っているものです。
このように、主な原因とそれを助ける縁から結果が生じ、その結果が原因や助縁になり、再び結果を生じ、また再び……という無限の連関を仏教では縁起と呼んでいます。ですから、私たちはあらゆるものから恩を受けているわけで、人間ならばそれに報いるべきだと思います。それは例えば「お蔭さまで」という感謝のことばに端的に表現されています。
皆様方はどの様なお気持ちでお盆のお墓参りをされるのでしょうか。それは、ご先祖様に対する敬いや感謝の気持ちからだと思います。
私たちはまず、ご先祖様の命や営みの成果が縁起によって次々と引き継がれ、そのお蔭で今の私たちがあることに思いを致し、感謝すべきです。次に感謝の気持ちを表すには、私たちがご先祖様から受けたと同じように、今度は未来の人たちに、つまり私たちをご先祖様とする子孫に良き成果を残さなくてはなりません。
ご先祖様に報恩感謝の信を捧げ、ご供養申し上げるお盆の心こそが、世代間倫理の問題を解決する鍵であろうと思います。